読んだらわかる!システム管理講座
あなたの会社でどうやって監視を始めるか − 死活監視とは?
公開日:2011年10月14日(金)
2 . 死活監視サービス構築の種類
死活監視サービスを構築するには、自らping(ポーリング)スクリプトを書き、PCなどにサービスを行わせる方法、あるいは外部より提供されるソフトウェアを用いる方法、そして、アプライアンスと呼ばれる専用サーバーを用いる方法などがあります。このページでは、自作スクリプトによる方法と、ソフトウェア、特にオープンソースで無償使用が可能なものについて説明します。
自作のping監視スクリプト
死活監視としては、pingを監視対象に定期的に送信し、反応が正常に返ってこない場合に指定のアドレスへメールを送信する、というのが基本的な手法になります。Ping実行とメール送信というシンプルなプロセスに限定するのであれば、簡単なシェルスクリプトなどで自作することができます。
たとえば自宅のサーバーなどを監視する程度であれば、余分なコストはかけず自作スクリプトで十分用が足ります。しかし、企業などのサーバーを死活監視・管理する場合は、より大きな規模の環境を管理するうえで運用に無理が生じるほか、自作スクリプトであるだけにトラブル時などでもサポート情報や業者に頼ることができません。
担当者への 依存度 | 構築の工数 | 機能 | 機能拡張の容易性 | 運用サポート | ||
自作の簡易 スクリプト (Ping程度) | 多 | 中 | 低 | 低 | 開発でいかようにもなるが、手間が多く、担当者個人への依存も高くなる。 | 問題があっても誰にも頼れない。 |
必須の機能を満たしたオープンソースソフトウェア Nagios
オープンソースの死活監視ソフトウェアを用いることで、自作スクリプトにはない様々なメリットを享受できます。そのうち、死活監視・メール通知という基本的な機能をカバーした代表的なもののひとつが、Nagiosです。
Nagiosは、フリーでありながら有償のものに匹敵する機能を利用できる死活監視ソフトウェアです。基本機能としてping監視とポート監視の様々な監視が利用できるほか、豊富なプラグインや独自の監視コマンドの定義を利用すれば、独自プロトコルによるサービスの監視や、エージェントを通してのリソース監視も可能となります。
Nagiosをソフトウェアとして導入する場合は、プラットフォームとなるLinuxサーバーに、コンパイルされたソースコードもしくはLinuxディストリビュータによって提供されるバイナリパッケージを用いてインストールすることになります。
低コストで豊富な機能を利用できる反面、Nagiosのデメリットは設定が比較的難しいこととサポートサービスが利用できないことと言えます。ソースコードからのインストールは手間がかかるため、ここではバイナリパッケージを用いたインストール方法を説明します。
Nagios本体と必要なプラグインのインストールは、インターネットに接続したサーバーからコマンドラインで行うことができます。Linux側のサーバー設定やNagiosの動作最適化設定、ユーザー権限設定などを行えば、あとは監視対象や監視スケジュールの設定などを行えば、運用開始できます。
運用開始後は、一般的なブラウザから管理URLにアクセスすることで、稼働状況の視覚的な把握も可能なため、監理者は便利に死活監視管理を行うことができます。
担当者への 依存度 | 構築の工数 | 機能 | 機能拡張の容易性 | 運用サポート | ||
特化型 ソフトウェア (Nagiosなど) | 中 | 多 | 高 | 高 | 監視コマンドの定義・新規作成で、幅を広げやすい。予めプラグインも豊富にある。 | WEB・書籍等で情報を得られる。 |
統合型の死活管理ソフトウェアHinemos®
Nagiosを死活管理に必須の機能を有した「特化型」とした場合、死活管理のみにとどまらず、リソース監視や監視対象検知、さらにはネットワークマップといった機能まで備えることで、統合的なシステムの監視管理を行うことができる監視ソフトウェアを「統合型」と呼びます。統合型の死活監視ソフトウェアで代表的なものの一つが、NTTデータ開発のオープンソースソフトウェア、Hinemosです。
特化型の死活監視ソフトウェアと比較し、Hinemosがさらに備える機能は、下記のようなものです。
・ サーバーをグループ登録できる
・ グループに対して死活監視、監視ジョブ管理が可能
・ グループに対してリソース監視が可能
・ その他様々な一括制御が可能
このように、最大の特長はサーバー群のグループ管理機能と言え、企業などの大規模なシステム環境も統合的に管理できる監視管理ソフトウェアとして、豊富な実績を備えています。
このほかにも、管理者権限のこまかな設定や、リポジトリでの情報管理機能などが備わっており、監理者はかなり高等な機能を駆使してシステムの監視管理ができるようになります。
統合型の充実した機能やサポートサービスの利用が可能なHinemosは、大規模な環境でやはりもっとも導入効果を発揮します。そのため、活用する環境の規模に合わせた導入の検討が必要です。
担当者への 依存度 | 構築の工数 | 機能 | 機能拡張の容易性 | 運用サポート | ||
総合監視 ソフトウェア (Hinemosなど) | 中 | 多 | 高 | 中 | 別途オプション購入で拡張可能。自身での拡張も可能だが、Manager/Clientの双方に変更を加える必要がある。 | WEB・書籍等で情報を得られる。有償サポートに加入することも可能。 |
ここまで挙げてきたようなそれぞれのソフトウェアを用いることで、死活監視システムの構築・運用は確かに可能ですが、現場での導入・運用に踏み込んで考える場合、導入形態にも気を配る必要があります。
ソフトウェアとして既存のサーバーで運用するのか?あるいは専用サーバー(アプライアンス)での運用だとどうなるのか?次ページでは、死活監視を動かすハードウェアについても考えたうえで、死活監視の導入・運用について、より現実的な視点で説明します。