地域住民の生活を守る
L字放送用アプライアンスサーバー
災害情報をテレビに表示するL字放送の配信システムを『OpenBlocks AX3』で実現
株式会社中京エレクトロン
掲載日:2016/01/05
組織概要
東海3県を中心に放送事業を行う中京テレビ放送株式会社(以下、中京テレビ)のグループ会社で、テレビ放送の送出・送信やそれらに関する機器の保守・運用管理業務等を担う。また、中京テレビだけではなく他の放送局や企業に対して放送・通信ソリューションのシステムインテグレーションなども行っている。
NiSS gw mini 製品画像
株式会社中京エレクトロン(以下、中京エレクトロン)では災害情報の迅速な伝達を支援するアプリケーション『NiSS(News information Server System)』の開発・販売を行っている。今回、NiSSのアプライアンス版エントリーモデルにあたる『NiSS gw mini』のベースハードウェアとしてぷらっとホームのマイクロサーバー『OpenBlocks AX3』が採用されたので中京エレクトロンに採用の背景などの話を聞いた。
地域住民の安心・安全な生活を守るための情報配信をサポートする『NiSS』
東日本大震災以降、地震や津波などをはじめとする自然災害の発生から、被害を事前に防止するための取り組みの重要性が特に高まってきている。その取り組みのひとつに総務省が普及を促進するLアラート®(以下、Lアラート)(災害情報共有システム)がある。Lアラートとは、市町村が発信した災害時の避難勧告・指示など、地域の安全・安心に関する情報をテレビやインターネットなどの事業者と共有することで、各メディアを通じて地域住民に迅速かつ効率的に提供することを目的とした仕組みだ。
L字放送イメージ図
中京エレクトロンではこのLアラートの情報を迅速にテレビ視聴者などに配信するシステム『NiSS(News information Server System)』の開発・販売を行っている。災害発生時にテレビ映像の角にL字にかたどられたエリア内に災害情報のテロップが流れている映像をよく目にするが、Lアラートの情報はL字放送に流す情報元の1つとなる。しかし、Lアラートの情報をテレビ放送で流すためには放送事業者でいくつかやらなければならない事がある。
「Lアラートから配信される情報をL字放送でテレビの映像に流すには、情報の精査であったり、文字の編集作業やL字放送のためのフォーマットに変換したりと、結構やる事が多いんです。」と株式会社中京エレクトロン 営業技術部 システム技術グループ 神谷公人氏(以下、神谷氏)は言う。
Lアラートの情報は汎用性の高い、いわゆるテキストフォーマットに近い情報で配信されるだけで、そのままテレビで放送出来るわけではない。しかし放送局は緊急性の高い災害情報は迅速にテレビ視聴者に伝えなければならない反面、災害発生時は放送局内の人的リソースに余裕が無い事があり、Lアラートの情報を精査し・加工する余裕がないケースが多いと神谷氏は話す。そこでそれらの問題を解決するために中京エレクトロンが開発したアプリケーションが『NiSS』だ。『NiSS』であればLアラートの情報の精査・編集・配信などの作業を一元管理する事ができるため、放送事業者は災害発生時にも迅速にLアラートの情報を配信する事が出来る。
株式会社中京エレクトロン
営業技術部
システム技術グループ
神谷公人氏
『NiSS』は在京キー局をはじめ、多数の放送局への導入が進んでいる。放送エリアが広い放送局であればあるほど配信しなければならない情報が多くなり、Lアラートの情報を管理する仕組みが必要不可欠だからだ。一方、中小規模の地方局やケーブルテレビ局などの場合、Lアラートの情報を迅速に配信しなければならないが、NiSSは多機能であるがゆえに導入コストも比較的大きく、さらに『NiSS』を動作させるためのスペックの高いサーバー機器の選定・導入を要するため、『NiSS』の導入を踏みとどまるケースが少なくなかったという。
「扱う情報の量はキー局と比べれば少なく、NiSSほどリッチな機能は要らないので、特定の機能に特化し、価格帯を落としてかつ手軽に導入できるラインナップが必要と感じていました。」(神谷氏)
そこで中小規模の顧客をターゲットとした、特定の機能に特化し、ハードウェアの選定等も不要で低コストに導入できるアプライアンス製品『NiSS gw mini』を企画・開発するに至った。
信頼性の高さ・処理性能・長期供給が採用の決め手
株式会社中京エレクトロン
営業技術部
システム技術グループ
吉田祐子氏
また、中京エレクトロン 営業技術部 システム技術グループ 吉田祐子氏(以下、吉田氏)は採用検討時の様子をこう語る。
「OpenBlocks AX3の他に採用候補のハードウェアは2つありました。実際にLアラートのデータを受信して、配信完了するまでの時間を計測したんですがOpenBlocks AX3の速度が一番速かったですね。」
エントリーモデルとはいえ緊急度の高い情報を取扱う以上、処理性能の高さも重要だ。『OpenBlocks AX3』は手のひらにのるほどの小型サイズながら、1.33GHzのデュアルコアCPUを搭載しており、メモリも最大3GBまで搭載可能なマイクロサーバーだ。
「NiSS gw miniは長期供給というコンセプトもありました。他社製品だと短いスパンで新製品が出て、古いものは終息になっていくケースがあるんですが、OpenBlocks AX3の場合は長期供給を目指した製品と聞いていましたし、5年間のハードウェア保証もつけられるとの事だったので、これも選定の理由のひとつでしたね」(神谷氏)
『NiSS gw mini』の企画・開発をするにあたり、アプライアンス製品として出す以上ベースハードウェアの選定が必要となる。結果的に『OpenBlocks AX3』を採用したが、採用に至るにはいくつかの理由があった。
「もともと、うちの社内の人間がOpenBlocksを別の案件でサーバーの監視用途に使っていたんですよね。長期間特にトラブルもなく信頼性が高いハードウェアと判断しました。」(神谷氏)
開発の手間をかけずにソフトウェアをアプライアンス化
『OpenBlocks AX3』は高い処理性能や信頼性の高さはもちろん、アプライアンスのベースハードウェアにとって重要な開発のしやすさも備え持つ。 「NiSSはもともとCentOSで作られていたのでDebian GNU/Linuxが載ったOpenBlocks AX3での開発については若干の不安がありました。でも実際に開発をはじめると特に大きな問題はなくスムーズに実装する事ができましたね。独自のディストリビューションではなく、一般的なLinux OSでしたので。あと、直接ソフトウェア開発には関係ありませんが、物理的なハードウェアの小ささというのは大きなメリットでしたね。自分の机のすぐ真横にハードウェアを置いて開発が出来るのは色々と便利でした。」(神谷氏)
最後に『NiSS』の今後の展望について神谷氏が次のように話をしてくれた。 「Lアラートの配信をしたいお客様は主に放送局ですが、それ以外のお客様へのアプローチもしていきたいですね。例えば今後デジタルサイネージが町中にどんどん普及していくと思います。そのときにサイネージの配信会社へ提案して町中のあらゆる場所にLアラートの情報を迅速に表示出来れば、今よりも災害による被害を抑制出来ると思います。あとLアラート以外の情報も配信出来るような仕組みも作ってみたいですね。当然、今ニーズの高い情報がなんなのかはこれからリサーチしていく必要がありますけど。今後これらの提案をしていくにあたって、いきなり大規模なものいれるというのはハードルが高いと思います。そういうときにOpenBlocks AX3で作ったNiSS gw miniのような、低コストでスモールスタート出来るものがあるとやりやすいと思います。そのためにぷらっとホームさんにはもっと低コストで性能の高いハードウェアを作って欲しいですね。」と、OpenBlocksシリーズのさらなるコストパーフォマンスの向上に期待を寄せた。
※「Lアラート®」は、総務省及び一般財団法人マルチメディア振興センターの登録商標です。(登録第5802710号)