掲載日:2006/09/19
ビジネス背景
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTTコミュニケーションズ)は、2005年12月にOCNのオプションサービスとして「OCN IPv6サービス」の提供を開始した。
OCN IPv6を利用すれば、インターネットを介して、外出先のPCなどの端末から、簡単に自宅のネットワークに接続できる。名称にもあるIPv6の特長として、自宅のネットワーク端末全てにグローバルIPアドレスを持たせ、外出先からダイレクトにアクセスすることが可能である。そのため、自宅ホームサーバへのアクセスはもちろん、AV機器やネットワークカメラのコントロールなどを外出先の端末から行うことが可能である。また、DIO機能などを備えた機器を用いることにより、IPv6に対応していない電灯やエアコンのスイッチON/OFFも可能であるなど、実に広範な用途が見出せる。
また、OCN IPv6は、IPv4環境とIPv6環境を並存させて利用できたり、NATルータの内側からでもIPv6通信ができるという長所を持つ。そのためユーザは、アクセスが容易というIPv4の長所、そして自宅のネットワーク全てに固定グローバルIPアドレスを持たせることができるというIPv6の長所の両方を享受できる。
さらに2006年2月には、追加機能として「OCN IPv6モバイル」が開始された。この機能により、携帯電話や携帯ゲーム機などの様々なモバイル環境からOCN IPv6ネットワークへ、インターネットを経由したアクセスを行うことが可能となる。例えば、センサー機能を持つネットワークカメラなどを用い、自宅で何か動くものを検知した場合に携帯端末へ連絡をさせる、自宅の映像を携帯電話の画面でチェックする、あるいは自宅のドアロックが回るのを検知して連絡、といったセキュリティ用途にも活用できる。
NTTコミュニケーションズは現在をIPv6の移行期としてとらえ、今後の更なるIPv6需要の拡大を目指す。
OpenBlockS 266でOCN IPv6アプライアンスサーバを作成
こうした中で、NTTコミュニケーションズの社員が自ら運営する「IPv6ブログ」http://ipv6.blog.ocn.ne.jp/がOCNにて公開されている。
IPv6ブログには、NTTコミュニケーションズ社員が投稿するさまざまなOCN IPv6活用事例の記事が掲載される。記事はその内容によって「ホームサーバ」や「家電コントロール」「PC-UNIX」「プログラム」「IPv6ユーザ」といったカテゴリに分類され、また実際の作業に基づいた文章や写真で構成されるため、OCN IPv6ユーザにとっては非常に有益な情報源となっている。
例えば、このブログで紹介されたツールのひとつとして、ホームサーバ構築ツール Apaconf がある。Apaconfは、Apacheを使用してホームサーバを構築するのに通常必要な作業、すなわち、Apacheを手に入れ、それにパッチをあて、コンフィギュレーションファイルの設定変更を行って導入、という一連の作業を、一元化したインストーラとインターフェースで簡単に可能にしてくれるツールである。IPv6ブログ上では、配布のみならず、Apaconf使用レポートも随時掲載・更新されている。
OpenBlockS 266をOCN IPv6アプライアンスサーバに
先日、このIPv6ブログにおいて、Plat'Home製マイクロサーバ OpenBlockS 266 のファームウェア※が公開された。ユーザは、このファームウェアへアップデートを行うことにより、OpenBlockS 266をOCN IPv6ネットワークの終端端末として利用することが可能になる。 このファームウェアは、2006年6月の INTEROP2006 におけるNTTコミュニケーションズブースで展示された、OpenBlockS 266ベースのOCN IPv6アプライアンスサーバに搭載されたものである。このアプライアンスサーバの開発には、どういった経緯があったのだろうか。
アプライアンスベースとしての長所
OCN IPv6を利用する際、通常であれば、PCなどの端末をホームネットワークのIPv6用サーバとして常時稼動させる必要がある。しかし、このアプライアンスサーバを終端端末として利用すれば、PCを常時立ち上げておく必要、あるいはPCにソフトウェアをインストールする必要もなくなる。ユーザは、アプライアンスサーバを利用機器に接続するだけで、非常に省スペース・低コスト・堅牢といったハードウェア的な特長を享受しつつ、OCN IPv6ネットワークを活用することが可能となる。
こうしたハードウェア的な特長に加え、ソースコードをはじめとする全ての情報が公開されていることも、OpenBlockS 266がアプライアンス作成に最適なハードウェアとされるゆえんである。OCN IPv6用アプライアンスサーバの作成は、OpenBlockS 266が持つこうした特長をフルに活用して進行された。
OpenBlockS 266がベースハードウェアとして採用されたいきさつには、開発陣からの製品に対する信頼があった。採用・開発の経緯について、開発者のNTTコミュニケーションズ桑原氏は以下のように語る。
「ソースが公開されているもので、触りやすいものがないかと探したところ、OpenBlockS 266がまず目に付きました。…ソースコード自体、SSD/Linuxで、BSDのマクロを使っているということで、非常にわかりやすかったですね。」
NTTコミュニケーションズ 桑原氏
桑原氏は、OpenBlockS 266に搭載されるオープンソースOS、 SSD/Linuxにも高い評価を与える。仕様の全てがオープンな(=WEB公開されている)SSD/Linuxは、カスタマイズの際非常に扱いやすいOSであり、まさに今回のようなアプライアンス作成用途には最適のOSである。インタビューでOpenBlockS 266やSSD/Linuxの話題に及んだとき、開発プロセスについて語るNTTコミュニケーションズ開発陣のいきいきとした笑顔は印象的なものであった。
導入効果とこれから
かくして、OpenBlockS 266をベースとしたOCN IPv6アプライアンスサーバは無事完成し、INTEROP2006で展示された際には、来場者からの反応も好ましいものであったという。本インタビューが行われたのはIPv6ブログでアプライアンス用ファームウェアの配布が開始された当日であり、取材陣に対して開発陣によるデモ運用も行われたが、携帯電話からOpenBlockS 266の小さな筐体を介して遠隔地のカメラやキーロックを制御する様子は、NTTコミュニケーションズが描くITCソリューションの未来を垣間見るように思われた。
現在NTTコミュニケーションズの開発陣では、さらに踏み込んだかたちでのぷらっとホームとの協業も検討されており、またOpenBlockS 266の特長を継承しつつ新たな機能を盛り込んだマイクロサーバ「OpenMicroServer」をベースとしたOCN IPv6アプライアンスの開発も検討されているという。
(2006年8月取材)
※IPv6ブログにて配布されるOpenBlockS 266(SSD/Llinux)ファームウェアはNTT コミュニケーションズによって改変されたものであり、ぷらっとホームが正式に配布するものでありません。また、このファームウェアによって生じるいかなる損害についても、NTT コミュニケーションズおよびぷらっとホーム株式会社は責任を負いかねます。ご了承ください。
東京都千代田区に本社。インターネットやモバイル、ブロードバンドの進展につれ高まる、顧客のICT(Information and Communication Technology)へのニーズに応えるため、様々なサービスを組み合わせてワンストップで提供する「ICTソリューション」を実現。
グローバルかつ大容量なIPネットワークや、ネットワーク能力を最大化するデータセンター、そして情報交換機能を最適なサービスとして結実させる各種プラットフォームサービスを基盤とし、さらにNTTグループ内外の企業と連携を行うことで、包括的なソリューションの提供を行っている。
http://www.ntt.com/
OpenBlockS 266