掲載日:2011/8/30
組織概要
人と地球にやさしい情報社会の実現に向けた、IT・ネットワークを中心とする製品・サービスの提供。
ITサービス、プラットフォーム、キャリアネットワーク、社会インフラ、パーソナルソリューション。
日本電気株式会社(以下NEC)は、システム構築時のユーザ側負担を最低限にとどめたビデオ会議用ネットワークシステム、というコンセプトのもと、ビデオ会議用の閉域ネットワークアプライアンス(ビデオコミュニケーションクラウド)を開発した。このアプライアンス製品は柔軟な導入性と運用性で高い評価を受け、テレプレゼンス会議サービスを提供する貸会議室事業者などで導入が進んでいる。
そのなかで通信を担うネットワークソフトウェアとしてL2-VPNのPacketiX VPN、ハードウェアとしてOpenBlockS 600が採用されている。
一歩先のビデオ会議用ネットワークを
そもそもこれまでのビデオ会議用ネットワークでは、様々な問題点がついて回っていた。たとえば、導入先企業のファイアウォール設定を変更しなければならずネットワークポリシーに抵触するケース、あるいは、固定グローバルIPアドレスを取得できる数が限られているだとか、インターネット回線を使わざるを得ずビデオの帯域確保の必要やネットワーク遅延が発生する、といったケースである。もちろん、IP-VPNや広域イーサ回線を用意することでこうした問題のいくつかは解決できるが、今度はコスト面で問題を抱えることになる。
それらを克服するべくNECが提唱するのが、フレッツ網を仮想閉域回線としてビデオ会議用ネットワークに活用する技術である。このことで、コストは抑制しつつインターネット回線遅延の影響を最小限にとどめることが可能となる。
シンプルな導入性、高い機能と運用性
こうしたコンセプトを手のひらサイズの筐体に収め、回線を選ばないテレビ会議用ネットワークソリューションとして提供されるのが、このアプライアンス製品である。
アプライアンス製品の外観
可搬型テレプレ装置の事例
ブリッジ接続が可能で、高い導入性を実現したほか、通常のインターネットを利用したテレビ会議用回線で発生しうるプロバイダ側の回線遅延によるトラブルの発生を、新設フレッツ網(光・ADSL)活用による仮想閉域網構築で最小限に抑えた。フレッツ網はIPv6で提供され、また顧客拠点側は固定グローバルIPが一切不要なためにさらに優れた導入性が確保される。
ネットワーク構成図
接続された状態のアプライアンス装置
(ビデオコミュニケーションクラウド)
提供形態は、このコンパクトなアプライアンス装置のレンタルサービス契約という方式をとる。1拠点に1装置がレンタルされ、初期導入はシンプルなネットワーク調査と機器設置調整で完了する。運用上の課題をすべて満たしつつ、ユーザ企業の負担をきわめて小さいものにとどめることで、すでに導入企業からの評価は高いものであるという。
こうした製品価値の中核を担うものとして採用されたのが、OpenBlockS 600、そしてPacketiX VPNである。
暗号化、IPv6、あるいは速度やコスト面で確かな優位点のPacketiX VPN 3.0
日本電気株式会社
イノベイティブソリューション推進本部
第一サービスソリューショングループ
マネージャー
岩間英治氏
メインのユーザとなる貸し会議室業者からは、ビデオの音声伝達のためVoIPの設定が入っていて、閉域で使えること、というニーズがあったが、一般的なテレビ会議システムには往々にして暗号化オプションがついていない場合があった。とはいえ、インターネットを介する場合だと、異なるメーカー間のテレビ会議システムを接続した際のインターオペラビリティを考慮する場合、やはり暗号化は使えなくなり、問題がある。これを、PacketiX VPNの採用により、VPN側で暗号化を行うことで解決した。インターネット回線について懸念となっていた回線速度も、末端で10Mbpsの実測値が出ており問題はないという。
「SSL-VPNだと、あらゆる製品の混在する状況では使用できません。PCでなければいけないとか、相対するそれぞれの環境が同じようなものでないといけないとかいう制限があります。大手ベンダのものでも同様の問題があったり、またコストがかかりすぎるケースもあります。一方PacketiX VPNならこうした問題を克服できるし、テレワーク環境として考えた際、資料データのやりとりなどもできるのもアドバンテージです。さらにモバイル環境でもつながる、優れた柔軟性もあります。」(岩間氏)
タブレットPCで遠隔地とビデオ
会議を行うデモンストレーション
また、ビデオ会議においてRTP(Real-time Transport Protocol)パケット がやりとりされるうえで、膨大なアドレス空間を持ちネットワークに優れたスケーラビリティを付与するIPv6は必須の技術であるが、IPv6の閉域網で問題なく使えることも、PacketiX VPNの評価対象となったという。
OpenBlockS 600でハードウェア面の導入性・運用性にもアドバンテージ
ハードウェアに関しては、開発段階当初は他に日本他社製のハードウェア、そして中国メーカーの製品も採用候補に挙がっていたという。
「相互比較した結果、ぷらっとホームの製品にしました。もともとUNIXで有名な企業ということで信頼感もありましたが、やはり、設定・運用面への要件を満たしていた点、そしてコストを安価に抑えることができることです。」
その要件とは、スムーズな開発を実現するための柔軟性や諸々のサポート、そして、テレビ会議システムという用途の性質上、環境を問わず設置・導入・運用ができるような堅牢性である。
「(稼働中にケーブル類を)抜き差ししても壊れないとか聞いていて、最初は信じていなかったけど、実際にそういう想定外な使い方をしていても、使い始めてからまったく問題が起きていない。場合によっては、机の真下の床にぽんとむき出しで置かれていて、少々の物理的ショックがあっても、びくともせずに稼働しています。堅牢ですね。」(岩間氏)
「開発フェーズでは色々と特殊なことを(ぷらっとホームに)対応してもらったのでトータルでは一か月かかりましたが、想定よりもずいぶん早かったです。OpenBlockS 600では開発に必要なものが大体そろっているから、助かりました。ぷらっとホームの技術陣によるサポート対応も、迅速で素晴らしかったですね。
OpenBlockS 600は、購入して手元に届いて、設定して、あとは挿して終わり、というイメージ。導入も早かったですね。シンプルに入れるなら、1日2日で入れられるものなのではと思います。」(岩間氏)
OpenBlockS 600が当初からPKI(Public Key Infrastructure, 公開鍵暗号基盤)に対応していたこと、またぷらっとホームからDDNS(Dynamic DNS)の導入についてサポートが受けられたことも、スムーズな開発につながったという。
事業規模の拡大へ
PacketiX VPN 3.0、そしてOpenBlockS 600を活用したこの製品の成功を受け、岩間氏は次のように総括する。
「テレビ会議室向けにネットワークインフラを販売する業者は他にも多くあり、またレンタル形態での提供をしているところもそれなりにあります。しかしNECは、こうした部材との出会いによって、コストパフォーマンスに優れた形態での提供が可能となりました。ポート数単価をどれだけ抑えてゆくか、というところが重要な点だと考えていますが、システム側の特長も含め、NECは優位にあると言えます。」(岩間氏)
また、今後の展望についても伺った。
「すでに導入されているお客様に加え、今後100拠点規模まで普及拡大を目指しています。また、複数部署を持った10以上の拠点からなる社内ネットワークでも同様のシステムを使いたいというお話をいただいていて、そちらでも話が進んでいます。」(岩間氏)
iリアルタイム・データ転送プロトコル。映像と音声データを利用して遠隔会議を行うアプリケーションなどで利用されることを想定し、映像や音声データをリアルタイムに適した形で転送することを目的に設計される。時間単位でデータをパケットに分割して、パケットにデータの時間の情報を付加して転送できる。