掲載日:2005/11/18
ビジネス背景 - DICOMとは
モダリティ(画像撮影装置)の例
DBOX
OpenBlockS 266
DICOM(= Digital Imaging and COmmunications in Medicine)とは、医用デジタル画像および通信に関する規格である。いまではDICOMは、医療施設におけるCTやMRIなどの「モダリティ」(=画像撮影装置)から生成される医用画像およびその通信に関する規格としてデファクト・スタンダードとなっている。
DICOMで扱われる医用画像データは、サーバを介し、専用のビューワによって閲覧される。そこでは単に画像を参照するだけではなく、データのヘッダに含まれる撮影者や患者データ・撮影条件などの情報も併せて参照することができる。そのため、DICOMはかつてフィルムが担っていた役割を引き継ぐのみならず、医用画像の参照における新たな視座を与えることで、医療現場に非常に大きな変革をもたらすものとなった。
DICOMシステムの運用には、大量にやりとりされるDICOM画像の処理用サーバが必要になる。このDICOMサーバは、ストレージに保存された大量のDICOM画像を専用ビューワで検索・表示する役割を担っている。従来であればDICOMサーバの導入には一千万円前後を要し、さらには導入後も高額な保守・運用コストがかかるのが通例であった。この点に着目し、「もっと手軽に画像を扱えるようなDICOMサーバ」を開発したのが、株式会社リソースワンである。
導入目的 - 「DBOX」開発
従来のDICOMサーバはいずれも、高クロック数のCPUを搭載し、サイズはラックマウント型で大きく、ストレージにはRAIDを用いたものであった。そうしたサーバは数百床・千床規模の画像発生量の多い大学病院などの用途に適している。
しかし、入院施設を持たない、あるいはあっても百床程度の、開業医や診療所といった比較的小規模な医療施設では、コスト的な問題から導入不可能である。そこで、DICOMサーバとしての機能を必要最小限に絞込み「低コスト・高信頼性・超小型・メンテナンスフリー」といった開発コンセプトのもと作られたのが、リソースワンの本格的マイクロボックス型DICOMサーバ「DBOX」である。
外形寸法125mm(W)×80mm(D)×40mm(H)という超小型サイズ。可動部分であるハードディスクとファンを排除することでのメンテナンスフリーを実現。画像データを保存するストレージには、内蔵ハードディスクではなく市販の廉価なNASを用いるというアイデアを採用。そのため、ストレージ(ハードディスク)の運用・管理は市販のNASの運用・管理さえできれば可能である。またDBOX本体の備えたWEB管理機能により、データの設定などはWEB経由で行うことが可能となっている。機能は小規模な環境での運用に向けて絞り込まれたものだが、複数のDBOXによるクラスタ構成、あるいはより大きなNASと接続などを行えば、より大規模な環境での運用も可能となる。
開発コンセプトに基づいたこれらの特長をすべて実装し、DBOXは発売に至った。こうした特長の実装を可能にしたのが、ハードウェアとして採用されたPlat'Homeの「手のひらサイズのオープンマイクロサーバ」OpenBlockS 266の存在であった。
導入プロセス - OpenBlockS 266のアドバンテージ
DBOX PersonalとNASとの
組み合わせ例
DBOXは、ベースシステムとなるOpenBlockS 266に、さらに液晶表示・放熱フィン・筐体などを実装し、DICOMサーバ用途に開発された専用ソフトウェアを搭載して販売される。OpenBlockSシリーズは元来限定的でない様々な用途への利用を開発コンセプトに持った製品であり、その意味でDBOXは、OpenBlockS 266の性格が自由な発想のもと十二分に活かされた、非常に個性的な製品であるといえる。
OpenBlockS 266は、DBOXの開発にとってまさにうってつけのハードウェアであった。本体自体にハードディスクやファンなどの可動部分を持たないこと、WEB管理機能、医療用途にふさわしい安定性・耐久性、コストパフォーマンスなど、OpenBlockS 266の備えたこうした特長は、DBOXのコンセプト実現に必要不可欠のものであった。また、OpenBlockS 266が当時発売された最新モデルにおいてRAM容量64MBから128MBへとスペックアップを果たしたことも、採用への大きな追い風となった。
もっとも、開発の中途では、他社製マイクロサーバを用いた多くの試作機もつくられた。しかしいずれも満足のゆく結果は得られなかったという。
「(他社の場合)Linuxのアップデートやカーネルのバージョンアップもおぼつかないような状態」
とリソースワン代表の後藤氏。そんな中でDBOX開発陣は、OpenBlockS 266というハードウェア自体に加え、ソフトウェアに対するPlat'Homeのサポート体制、あるいはユーザと一体となったその開発の姿勢にも高い評価を与えた。
「OpenBlockSはハードウェアとソフトウェアが一体となってユーザを盛り上げてゆく商品に映りました。…ああいうところが『開かれたハードウェアとソフトウェアの世界』というか。すばらしいと思いますね。」(後藤氏)
導入効果 - 顧客にも開発者にも高い満足度を
OpenBlockS 266上に搭載されているメモリ容量は128MB。そのため、200MBから300MBものDICOM画像データをメモリ上に一時的に保管することができない。そこで、DBOXには独自に開発された特殊な通信ライブラリが実装された。これにより、通信を行いながら同時にNASに画像データを書き出すことが可能である。こうした設計は、世界的に見ても唯一のものであるという。
こうした自由かつ独自な発想を実現することで、DBOXは非常に魅力に満ちた商品となった。それに加え、顧客となる医療機関と直接コンタクトをとり設置まで行うというリソースワンのスタイルも手伝って、DBOXは好調に売れ行きを伸ばし、今では関東圏をはじめとする多くの医療施設で導入されるに至った。納品先の顧客満足度も非常に高いという。
OpenBlockS 266が採用された背景には、OpenBlockS、そしてPlat'Homeに対するリソースワン開発陣からの高い評価がうかがい知れる。DBOXの顧客満足 度を見れば、OpenBlockS 266、そしてPlat'Homeはそうした開発陣の期待に見事応えられたといえよう。しかし、DBOXという製品が魅力を備えるにいたった真の要因は、OpenBlockSやPlat'Homeを存分に活用するリソースワン開発陣の飽くなき探究心にあるようだ。リソースワン代表 後藤氏はこう語る。
「うちのスタッフの一人なんかは、『(OpenBlockSを)自宅にも一台欲しいな』なんて言葉が出てくるくらいで。そういう、技術者魂をくすぐってくれるようなところがありますよね。非常によくできたもの... 技術者にとってはおもちゃ。そしてユーザにとっては、安定したよい製品。そう思いますね。」
後藤氏の高い評価の背景には、技術者の好奇心と飽くなきチャレンジ精神を徹底してサポートしたいというぷらっとホームの姿勢がある。リソースワン「DBOX」の事例は、こうしたぷらっとホームの姿勢と技術者魂とが出会い、真に実を結んだ一例といえる。]
【株式会社リソースワン】平成16年に株式会社へ改組。ソフトウェア委託開発、企画・開発・販売、自社製DICOM(医用専用画像・通信規格)サーバの販売、システムコンサルティング、医用システムの企画・開発・販売、コンピュータ機器販売を行う。神奈川県横浜市に本社。
2004年、それまでのDICOMサーバのイメージを脱却したマイクロボックス型DICOMサーバ「DBOX」シリーズを発表。ディスクレス・豊かな拡張性・安定性・柔軟な操作性・驚異的なコストパフォーマンスを備えたDBOXシリーズは、発売以来、とくに小規模な医療施設から好評を博し、広く活用されるに至った。
http://www.rs1.jp/
OpenBlockS 266