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慶應義塾大学

街のあらゆる環境情報を
すみずみまで測定・データ収集

ごみ収集車に環境センサーを取り付け、
データの収集・見える化を行うプロジェクトで「OpenBlocks IoT BX1」を利用

慶應義塾大学

掲載日:2016/03/30

組織概要

慶應義塾大学 徳田・高汐・中澤研究室
慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス内にある研究室で、さまざまな場所にさまざまな形で埋め込まれたコンピュータを、人間の活動に簡単に利用できるよう、知的情報環境コンピューティングの実現を目指した研究開発を行う。アイデアを考える、理論を考えることだけにとどまらず、実際に動く物やシステムを作り上げ、成果物を実際に使って検証してみることを重要視した活動を行う。

市街地の環境が現在どのような状態なのか、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術を活用し、街中のあらゆる環境情報を測定・データ収集する取り組み「スマート藤沢プロジェクト」が実験的に行われている。当プロジェクトを実現する仕組みの中で環境センサーとサーバーを結ぶIoTゲートウェイに「OpenBlocks IoT BX1」が採用されている。当プロジェクトを推進する慶應義塾大学に当製品採用の背景などの話を聞いた。

市内の環境情報をくまなく見える化

中澤仁氏

慶應義塾大学
環境情報学部 准教授
中澤仁氏


米沢拓郎氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
特任講師
米沢拓郎氏

慶應義塾大学ではIoT黎明期より欧州の複数機関とIoTに関する共同研究プロジェクトに参画していた。慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 中澤仁氏(以下、中澤氏)は主に神奈川県藤沢市内にあるキャンパス(慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス)に勤務しており、長年培ってきたIoTに関するノウハウを活用し、何か藤沢市に役立つ事が出来ないかを考え、藤沢市職員にインタビューを頻繁に行っていたという。
「藤沢市役所のIT推進部門をはじめ、高齢者支援部門、土木技術部門、環境部門など、まずは様々な部門から話をお聞きしました。藤沢市職員の方々は情報技術に関する意識が前向きな方が多く、情報技術の力で解決できそうな課題が次から次へと出てきましたね。」と中澤氏は話す。中でも印象的だった課題は、環境部門職員から聞いた大気汚染物質の測定に関するものだったという。藤沢市ではPM2.5をはじめとするさまざまな市内の環境情報をホームページにて公開しているが、藤沢市内に導入されている大気汚染物質の測定器は4箇所にしかなく、測定器から距離の離れている住民に対してより多くの情報提供を行いたいという課題があった。中澤氏はIoTの技術を使いこの課題を解決出来ると考え、環境情報のデータ収集・見える化を行う実証実験「スマート藤沢プロジェクト」が開始された。

導入実績の豊富さ・国内メーカーが採用の決め手

藤沢市のごみ収集車

車体上部に各種センサーが
取り付けられた藤沢市のごみ収集車

「スマート藤沢プロジェクト」はまず、どのような方法で市内全域の環境情報のデータを収集するかが最初の検討課題であった。「コストは高いですが最も手っ取り早い方法は市内のあらゆる場所にセンサーを取り付けて情報収集をする事ですね。実際欧州ではそれをやっている例もあります。」と慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任講師 米澤拓郎氏は言う。実際に欧州では2万個以上のセンサーを街中のあらゆる場所に取り付け、環境情報をセンシングし、データを収集している例があるという。ただしこれは欧州連合による資金的な補助もあって実現している実証実験プロジェクトだそうだ。「スマート藤沢プロジェクト」開始当時、市内のあらゆる場所にセンサーを設置するほどの予算はかけられなかった為、別の方法を考える必要性があった。そこで、市内をくまなく移動する車に着目した。「市内を巡回しているような車、救急車や消防車、ごみ収集車などにセンサーをつければ少ないセンサーの量で広範囲のデータセンシングが行えるのではないかと考えました。」と中澤氏は話す。車種を検討した結果、市内のいたる場所を通り、かつ定期的に走るごみ収集車が最適と考え、センサーを取り付けたごみ収集車が市内の環境情報をセンシングする事となる。

「スマート藤沢プロジェクト」概要図
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センシングデータをサーバーに届けるOpenBlocks IoT BX1

OpenBlocks IoT BX1

各種センサーの入ったボックスと
OpenBlocks IoT BX1

「スマート藤沢プロジェクト」でごみ収集車に取り付けられたセンサーはPM2.5、紫外線、照度、温度、湿度、排気ガス、気圧など多種に及ぶ。住民が気になる環境情報をセンシングし、それらのデータを3G通信で慶應大学にあるサーバーへ送信する仕組みだ。もちろん各センサーが直接インターネットに接続する事はできないので、3G通信が出来るIoTゲートウェイを通じてサーバーへ送信する。今回IoTゲートウェイ用途に採用されたのが「OpenBlocks IoT BX1」だ。

3G通信可能かつCPUアーキテクチャが採用の決め手

陳寅氏

慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科
特任助教
陳寅氏

「OpenBlocks IoT BX1」はIoTゲートウェイ用途に特化した超小型のLinuxコンピュータだ。当製品を採用した理由を慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教 陳寅氏は次のように話す。「プロジェクト開始当初は別のLinuxボードコンピュータを使って実験していました。ただこれには2つの問題点があって、まず3G通信機能が内蔵されておらず、Wi-Fiルータのようなインターネット接続用のデバイスを準備しなければならず、構成が複雑となってしまう事です。二つ目がCPUアーキテクチャの問題。当初利用していたLinuxボードコンピュータはCPUアーキテクチャがIAでは無かったので、特殊な事をしようとするとコンパイルが出来ないケースがありました。その点、OpenBlocks IoT BX1は3G通信機能内蔵でCPUアーキテクチャもIAだったので今回の要件にマッチした非常にバランスの取れたハードウェアでした。」

利用用途・利用地域の拡大でさらなる利便性向上を目指す

ごみ収集車は基本的にどの自治体でも運用されており、「スマート藤沢プロジェクト」の仕組みは容易に横展開が可能で、すでに他の自治体とも実証実験の話を進めているとの事だ。また、「スマート藤沢プロジェクト」では大気汚染の情報収集に焦点をあてているが、それ以外での用途での活用も考えていると中澤氏はいう。藤沢市職員からヒアリングした要望の中に、「徘徊老人の見守りがしたい」「道路やガードレールの傷・老朽化などを迅速に察知したい」などがあったが、これらを市職員が目視で巡回・確認を行うには限界がある。「徘徊老人の見守りも、道路やガードレールの老朽化確認も、ごみ収集車に目(カメラ)をつければこれらの課題は解決に近づくのではないかと考えているところです。ただ、映像のやりとりをする通信は高速通信が求められますし、市街地でのカメラの使用はプライバシー保護の観点から問題を含みます。OpenBlocks IoT BX1にLTEなどの高速通信機能がついたモデルがリリースされたら、いち早く連絡してほしいです。」(中澤氏)と、ぷらっとホーム製品の発展についても期待を寄せていた。


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